※作品のストーリーに対して批判的な内容を含むため、承知できる方のみ続きをお読みください。
『最強で最高の自慢の息子 season2』(以下、最ムス)を観た。
私は舞台が好きなので、少年忍者のメンバーが出演した舞台に必ず一度は足を運ぶようにしている。滝沢歌舞伎はさすがにチケットが取れなかったのでライビュに行ったが。
で、内村稲葉コンビが出演の最ムス。season2と書いてあるように、1年前の作品の続編となっている。
当時の私はまだ少年忍者を知らなかったので観劇していないんだけれど、season2の冒頭でも説明してもらえるし、それ以前にもフォロワーからなんとなく話は聞いていたのでさほど困らなかった。
それより怖かったのは、この作品を手がける脚本家に対する悪評をさんざん聞いていたため、わたしはこの作品に耐えられるのだろうか……という漠然とした恐怖である。
4ヶ月ほど前、彼が手がけた作品の主演のオタクによる怒り・諦め・絶望・悔恨・その他さまざまな負の感情がTLに流れてきた。全くもって、暗い作品ではないはずなのに。
しかも脚本家本人と疑わしきアカウントが、ツイッターで該当作品の批評をしたオタクに突っかかるなどして、そこそこ燃えた。
あとは、先に観劇したフォロワーが
『途中何回も気を失いかけてた 死ぬ時って多分こんな感じなんだと思う』
とツイートしており、コメディ作品の観劇中に死に思いを馳せることがあるんだ。と怖くなった。(既に空の母親が亡くなっているとはいえ……)
そんな感じで不安を抱えていたが、結論から言うと思っていたほどは酷くなかった。
笑えるところもあったし、みちはるがめちゃくちゃ衣装替えするのも楽しかった。
ただ、率直に話の作り方が上手くないと思った。
色んな要素がとっちらかってる割に何が言いたいかよくわからない。こういう事を言うと「理解力が足りないからだ!」とか反論が来そうだけれども、別に舞台において理解がすべてだとは思っていない。現に私はつい先日まで通っていた舞台でもわからないことだらけで頭を悩ませていた。
ただ、わからないの原因が「考察の余地がある」のと「何も無い」のとでは大違いという話である。
あと、話の構成が全てにおいて中途半端だった。
今回のあらすじは主人公の空(内村くん)の姉・美海がドバイの皇太子を彼氏として連れてきたり、兄・陸が初恋の大島さんに片思いをしていたり、かと思えば大島さんが実は父・結人といい感じで……? でも実はそうではなく、父と空が働く会社の経営状態が良くない中、父が次期社長になりそうで……。みたいな。
要素が多すぎる。
これらがすべて綺麗にまとまるんならいいんだけれども、特にそういうこともなく、場面の切り替えもわちゃわちゃしている中暗転して、次に照明が着いた時には別の場所に移動して……みたいな。
いっそサザエさんみたくオムニバス形式にして『美海、ドバイから彼氏を連れてくる』『陸、大島さんに片思い』『結人、社長に!?』みたいに分けてくれればまだスムーズだと思うのだが、考察をするようなタイプの話でもないのに話題があっちこっち行くので妙に疲れる。
あと単純に大声を上げることが演技指導のデフォルトになっているようで(これは八神家が下町感のある家庭だからという設定もありそうだが)別に大声を出さなくてもいいだろという場面でもずーっと大声を出しているのでわりと本気で内村くんの喉が心配になった。
要素のとっ散らかりや演技についてはまあ好みと言ってしまえばそれまでかもしれない。ただ、最大の問題は「空は一体何をしたの?」という、主人公の扱いである。
そう、『最強で最高の自慢の息子』というタイトルなのに今回空がやったことで印象に残っているものと言えば「家族の尾行・ソファで居眠り・会社で鍋をしようとしてうっかり火事を起こす」くらいである。
せめて「火事の前に大島さんが届けてくれた書類のおかげで無事だった、大きな案件」は空が取ってきた案件で……みたいなくだりがあればまだ話は違っただろうけど、主人公なのにこれといった変化や成長が見受けられず、なんかバタバタしてるうちに終わったな。というのが正直な感想だ。
なんだろう、全てがダメという訳じゃないんだけど、全てにおいて半端なんだよな……うまく調理できそうな要素も全部ヌルッと終わらせてそこ時間かけなくていいだろ……みたいな部分に時間を割いているというか。
それこそ会社のピンチに融資しようとしてくれた昌磨(みちはる)とファッザに軽いノリでよろしく頼むわ~ってした空に父が怒った時は「お!」と思ったのだが、その辺も「大きな案件」とやらでフワッとまとまったし……(陸がお母さんとの思い出話をしてくれたので、一応はそこが空の価値観に影響を与えたステップとも言えそうだけど、それにしては弱いというか)
時間かけなくていいだろ……の部分は、大島さんが天然すぎるというくだりなのだが、初対面の外国人と幼なじみ(陸)を混同していたり、会話の本筋とは関係ない言葉に引っかかって話が全然前に進まなかったり、天然というより何かしらの発達障害なのでは……となったあたり。(発達障害に詳しくないので有識者から反論が来ても言い返せないのですが、大島さんのあの発言集はただの天然でまとめていいのか?)
しかもラストで明かされるのだが、大島さんも実は陸のことが好きだったらしいので、「好きな人と知らん外国人を見間違えるなよ」とますます謎が深まった。
良い要素もあるんだけどねえ。昔ながらの父親と、強く優しい亡くなった母、気弱でオタクっぽい兄と強気でパワフルな姉、素直でわんぱくな末っ子……って家族構成は家族モノとして動かしやすいだろうし(それをうまく動かしきれなかったのが問題)、昌磨のキャラはみちはるによく合っていて好みだった。
演技に関しては、内村くんがとにかくデカい声を出し続けていたことによりうまく見極められなかった感もあるけど、火事の後の慟哭は良かったし、むしろ静かな役を見てみたいなあという気持ちにさせられた。
彼の元のパフォーマンスや感情表現がダイナミックということもあって、大きな感情は違和感なく出力できるみたいだけれど、繊細な役を求められたらどう応えるのか、とても興味深い。
みちはるの演技もとても良かったので、もっといろんな役を見たい。朗読劇とかもいいかも。
作品から少し離れたところでモヤった話。それは、少し前から内村くんがカテコでファンサし始めたと聞いたことだ。
少年忍者は「コンサートに行けば絶対誰かからファンサを貰える」と断言してもいいくらいにはファンサ大好き集団なのだが、だからってカテコでまでファンサしなくても……てか、周りの大人は止めなよ。
そもそもオタクはファンサを求めるな
テメェら何しに劇場来てんだよ
演劇を舐めるなよ
と怒り心頭だったのだが、いざ観劇してみると「これはファンサくらい貰わないと割に合わないよな~😅」と思いました。ごめん。
TLには最ムスを楽しんでいるフォロワーがたくさんいるので、このブログもフォロワーが減るだろうな……と思いながら書いている。
ただ、私がこの作品に対して抱く感情と、最ムスを楽しむ観客に対して抱く感情はまったくの別物である、ということは言っておきたい。当然っちゃ当然だけど。
オタクをやる上で財力とか体力とかいろいろ必要だけど、なんだかんだ楽しむ気持ちがいちばん大切だと思うので、フォロワーが嬉しいと私も嬉しい。(逆に楽しめなかった人も、自分を責めることは無いですよ)
ごちゃごちゃ書いたけど、結局のところ感想は人それぞれなので、こんな意見もあるんだな~くらいに流しておいてください。
それでは明日、無事に千秋楽を迎えられますように。