モンスター・コールズに行ってきた✌️
※以下、ネタバレ注意
※1度きりの観劇なのでセリフとか諸々記憶違いがあるかも
現場ブログではいつも「○○に行ってきた✌️」という書き出しで始めるので今回もそれに倣ったが、気持ちとしては
モンスター・コールズに行ってきた😭😭😭😭😭
って感じ。
もうめちゃくちゃ泣いた。
さまざまなフォロワー(全員繋がってない)が絶賛していたので行ってみたら、確かによくできた作品で、なるほどこれは人にすすめたくなる。
モンスター・コールズの主人公は13歳の少年、コナー・オマリー。
SexyZoneの佐藤勝利くんが演じている。(こう呼べるのも残りわずかですね……)
勝利くんは27歳で(森本慎太郎さんより年上!?)コナーの倍近い年齢だが、違和感がなくてすごかった。
モンスター・コールズではコナーの日常と、コナーの元に現れたイチイの木―モンスターが語る「三つの物語」、コナーが紡ぐ「四つ目の真実の物語」が主な要素となっている。
コナーの日常については、かなりハードだ。コナーはお母さんが癌の闘病中で、学校ではいじめられていて、お父さんはアメリカで新しい家族と暮らしていて、面倒を見に来てくれるおばあちゃんとは馬が合わなくて……とかなりハードな状況で生きている。
ヤングケアラーでいじめられっ子で母親以外の周囲の大人と適切な関係を築けていない。13歳が背負うにはどれも重すぎる……。
学校のいじめのシーンもきつかったけど、教師が「親が大変だから」という理由で贔屓するのもいたたまれなかった。
この作品では勝利くん以外兼役が多くて切り替えが大変そうだったけど、大津夕陽さん演じるいじめっ子のハリーが特に良かった!
ハリーはカリスマ性があるんだけどコナーに陰湿ないじめをしていて、めちゃくちゃ嫌な奴なのにどこか寂しい感じがした。
取り巻きが単独でコナーをいじめている時は、「こいつに手を出していいのは俺だけ」みたいなことを言い出すので、なんていうか、コミュニケーションが歪んでるだけで本当は別にコナーのことが嫌いなわけじゃないのかも?と思ったりした。
癌闘病にまつわる話でもあるので、観劇中、数年前に癌で亡くなった恩師を思い出した。
卒業後しばらく会っていなかったから末期の様子は見ていないのだが、コナーの母親のように苦しんでいたのかもと思ったら辛くなった。
コナーの母親が息も絶え絶えでコナーに語りかける場面ではずっと泣きっぱなしだった。
パンフレットの表紙にも描かれているイチイの木は作品の重要なモチーフ。モンスター・コールズではこれをロープで表現している。
最近はやたらとプロジェクションマッピングが使われるし(もちろんそれが良い方向に作用する舞台もたくさんある)、背景に木の絵を描いたり、舞台セットを用意するのでもありそうなのに、この舞台では天井からいくつも垂らしたロープを束ねて木のように見せている。おもしろい演出だ。
材質は全然違うのに、本当の木のように見えてくる。
「三つの物語」を聞いたコナーが執拗に「罰」にこだわるなと思った。実際彼は、おばあちゃんの家でも学校でも彼は自分に「罰」が下らないことに取り乱していた。
「四つ目の真実の物語」でやっと、私はコナーがなぜあそこまで罰にこだわっていたのかを理解できた。
彼はずっと誰にも言えない罪の意識を抱えていて、罰を受けることで楽になりたかったのだ。
コナーは母親に生きていてほしい気持ちと、母親から解放されたい気持ち、相反する気持ちで板挟みになっていた。
誰だって真逆の願いを同時に抱くことはあって、それは普遍的な二律背反だけど、コナーはどうしても自分を許せなかった。
だから本当はもうダメだとわかっていても、無邪気に母の癌が治るのを信じるふりをして、自分の気持ちを押さえつけていた。
かつて読んだ小説で、闘病中の少年が「みんな闘病を応援してくれる、ありがたいと思う、でも僕はもう死にたい、楽になりたい」と言っていたのをぼんやりと思い出した。
末期の病では、病気になった本人もケアする周囲の人間も、死ぬことで「終わりにしたい」と思ってしまう(もちろん治るならそれに越したことはないが、それが叶わないとわかってしまっている)んだろうな。
それでもコナーは、早く終わってほしいなんて口が裂けても言えなかった。しかしイチイの木との対話で「真実」を引き出されたコナーは、やっと自分の人生と向き合うことができた。
このコナーとモンスターの掛け合い、勝利くんと山内さんの芝居のぶつかり合いは本当に熱かった。
終演後、パンフレットを買った。
絶対買った方がいい!と予感したから。
実際中身はとても素晴らしくて、キャストコメントや稽古場写真、インタビューで作品の裏側について知れたし、薬草の専門家の方がイチイの木について解説しているコラムや、心理学の大学教授が作品及びコナーを分析したコラムまで載っていた。
インタビューや写真はどのパンフレットにもだいたい掲載されているが、演劇以外の専門家が寄稿してくださるのは珍しいと思う。
(私は熱心にパンフレットを集めるタイプでは無いが、演劇以外の専門家の寄稿があるものでパッと思いつくのが『R&J』のパンフレットくらいなので、そんなに多くは無いと思う。もし他にお持ちの方がいたら教えて欲しい)
特に中京大心理学部心理学科教授、川島大輔さんの文章に引き込まれた。
「物語を理解した瞬間に私たちは、何かを手放している」
何かを選ぶということは、それ以外を選ばないということだ。それでも各々が選び取らなければならない。
もうひとつ、主演の佐藤勝利くんのコメントも強く印象に残っている。
「劇場にお越しの皆さんには、さっきお話ししたような敷居の高さは忘れていただき、(略)気持ちを楽にしてご覧いただきたいです。」
モンスター・コールズのような生死にまつわる話ではどうしてもこちらも身構えてしまうし、「私は」勝手にプレッシャーを背負ってしまうタイプ(この作品から何かを得なければ……みたいな)なんだけど、演じる側がこう言ってくれたことで肩の荷が降りたというか。
エンタメって楽しむためにあるからね……。
そんなわけでモンスター・コールズ、めちゃくちゃ良かったです。
3月8日から大阪公演が始まるようなので、関西の方はぜひ。