日記 – 町田くんの世界

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ミュージカル「町田くんの世界」に行ってきた✌️

私は今まで100作品以上の舞台を観劇してきたが、こんなにも優しくあたたかい作品は初めてだった。

2回観劇して2回とも涙が止まらなかった。

私の絶賛ツイートがきっかけで観劇してくれた人もいてすごく嬉しかった。

その中には、普段めったに泣かないのに泣いたと言う人もいた。

必ずしも「泣く=良い」というわけではないが、この作品が多くの人の心を揺さぶったことは間違いないだろう。

今回は主に「原作との違い」と「町田くんの世界というタイトル」について書いていく。

・原作との違い

漫画に無くて、ミュージカルにはあるものと言えば、真っ先に思いつくのは音楽

和田俊輔さんの手がける音楽に何度お世話になったことか……。

私は残念ながら音楽の知識はさっぱりなので和田さんの作る音楽の魅力を言語化できないのだが、どんな作品でもマッチする曲を作ってくれる方だなと思っている。

それで、音楽に歌が乗るでしょ。

和田さんと、脚本のピンク地底人3号さんが共同で作詞した歌詞を、素晴らしい歌唱力を持つキャストの皆さんが歌い上げていく。

そうやって出来上がった歌は、今思い出すだけでも涙が出そうなくらい、「町田くんの世界」をあたたかくカラフルに彩っていた。

7巻あるコミックスを2時間のミュージカルにまとめ上げたので、ストーリーでの相違点は細かい箇所も含めると数えきれない。

ひとつ挙げるなら、主人公の「町田くん」そのものが原作とかなり違っていた。

原作だと淡々としていて、「一見クールに見えるけど、実は優しい」印象なのだが、ミュージカルの町田くんはぜんぜんクールじゃなかった。

これはミュージカルの特性(舞台表現は映像表現よりもオーバーがデフォルト)と、演者の特性(皇輝くんはもともと口角が上がっているので自然と笑顔に見える)が理由だと思う。

根底にある愛は原作と変わらないものの、表面の可愛らしさは増している、と言ったところかな。

どっちが良い悪いじゃなくて、媒体によっての違いは楽しいよね~って話。

あとは、時代の流れを汲んで改変しているところがそれなりにあるな~と思った。

わかりやすい例だと、親が離婚したひかりのオリジナル台詞。

「自己肯定感」という単語が登場する。

原作の連載時期(2015~2018)ではまだ今ほど浸透していなかった言葉だ。

原作だと「家族より夢を優先したバカ親父」と父親を評していたけれど、ミュージカルでは町田くんと氷室くんに対して「親に大切に育てられたから自己肯定感が強いんだよ」と言っていて、なんだかよりグサッときた。

ミュージカルには登場しなかったものの、毒親とか親ガチャといった言葉が浸透したこの時代だからこそ、良くない文脈で親を語る言葉にバリエーションができたというか、根深さが増すというか……。

原作から残したもの、カットするもの、ミュージカルのために改変するものの取捨選択のバランスがとても上手い脚本だなあと思った。

・町田くんの世界というタイトル

初回の観劇時、途中まで私はこのタイトルがしっくり来なかった。

途中までは、猪原さん、西野くん、さくら、英子先生、氷室くん、その他のみんなの世界を町田くんが優しく彩っていく、「町田くんの(おかげで色づいた皆さんの)世界」という側面が強かったからだと思う。

実際、原作にも「猪原さんの世界」というタイトルの話があって、ミュージカルでは時系列をわかりやすくするために原作では中盤にある「猪原さんの世界」を最初のほうに持ってきた、という作りになっていた。

町田くんは無欲で、ただただみんなを照らしていた。

しかしそこはさすがに原作が少女漫画というだけあって、最後には町田くんが猪原さんへの恋心を自覚し、なりふり構わず猪原さんのもとへ駆けていく。

ラストシーン、それまでスクリーンとしても活躍していた舞台背景の白い布が外され、きれいな世界がはっきりと映し出された。

この演出に私は涙が止まらなかった。

猪原さんと一緒にいる、この優しく彩られた世界が、「町田くんの世界」なんだ。

また、前半の「町田くんがみんなの世界を色づかせていた」場面についても、ぜんぶラストシーンの「町田くんの世界」に繋がるわけだから、2回目の観劇では作品まるごと「町田くんの世界」だと、疑うことなく楽しめた。

町田くんはみんなを救うけど(愛を知らない猪原さんを「受容」する、雑に扱われていた西野くんを「対等」に尊重するなど)町田くんが彼らをケアしていたわけじゃなく、純粋に人を愛し、愛された結果が現れたという話で。

そこを記号的に「親に愛されなかった女の子と理解ある彼くん」「いじめられっ子とかばうヒーロー」として雑に描くことをせず、「猪原さんと町田くん」「西野くんと町田くん」と丁寧に人間として描いてみせたのは、原作でも舞台でも共通している。

また、町田くんは与えてばかりいた訳じゃなく、みんなからさまざまなものを貰っていた。猪原さんへの想いを自覚したのも、直接的なきっかけは他にあるにしろ、やはり西野くんやさくらとの交流があってこそだろう。

「世界は悪意に満ちている」と歌う吉高さんほどではないが、大人になるとどうしても、人のことを信じられなくなる時がくる。そんな荒んだ心が洗い流されるような、愛に溢れた作品だったなあ……。

・まとめ

ハイレベルなキャストさん、丁寧に町田くんの世界を作り上げてくださったスタッフさんに本当に感謝……。

何より、こんなにも素晴らしい作品に出逢うきっかけをくれた皇輝くん、ありがとう。

どれだけ良い作品でも、知らなきゃ観劇できないわけで。映像化するとも限らないし、映像化したとしても舞台は劇場で観るのがいちばんだと思ってるからさ。

他にも話したいことは沢山あるけど、こまかすぎて伝わらなさそうだから手短にまとめました。

日本では珍しい東宝オリジナルのミュージカルということで、いつかまた再演するかもと思うとわくわくしちゃうなあ。

またあのあたたかい世界に触れたいな。

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この記事を書いた人

2022年秋に突然少年忍者にハマった新規オタクです。現場の感想や日記を書いています。

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