オタクが無価値とは限らないが、オタクは必ず業を背負っている – 日記(ルーザーヴィル鑑賞)

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※ネタバレあり
※ 1回きりの観劇なので歌詞などうろ覚えの箇所多々あり

ミュージカル『ルーザーヴィル』を観た。

色と光と音に溢れた、華やかで楽しい舞台だった。

カラフルなステージに衣装、鮮やかな照明、舞台の後方には楽器がセットされており、プロが生演奏で舞台を彩ってくれる。個人的には、ドラムが特にかっこよかった。

主演でマイケル役の井上瑞稀くんは声質が舞台向きだと感じた。発音も明瞭で澄んだ声はよく通る。他担ながら今後も舞台に立ってほしいし、声優のお仕事もしてほしいと願ってしまう程だった。

女の子はみな可愛く、それ以上に実力派揃いだった。

ホリー役の高月彩良さん。これまでにもドラマ等で拝見したけれど、生で見るとスタイルの良いすっきりとした美人だということがダイレクトに伝わってきて、演技も歌も上手く素敵な役者さんだった。

レイア役の青野紗穂さんは、小柄ながらも華々しいオーラを纏い、誰よりも力強い歌唱力で場を圧倒するタイプの役者さんで惚れ惚れした。

このまま他のキャストを褒めてもいいのだが、それは他の人に任せて私はこの作品を通して見つけたオタクの……だと主語が大きいから、「己の」最悪ポイントについて語ってみる。

主演はジャニーズJr.の井上瑞稀くん、そして2番手も同じくジャニーズJr.の本髙克樹くんなのだが、冒頭でなぜ彼に触れなかったかと言うと、このブログでは主に本髙くんの演じたルーカスを中心に書いていくから。

SF作家志望のルーカスは親友のマイケル含めオタク仲間でワイワイ楽しく過ごしているのだが、いじめっ子たちからはからかいの対象になっている。

そこで登場するのが噂の「オタク無価値ソング」である。

私が観劇前仕入れた数少ない情報は「ジャニーズ2人がオタク役」「瑞稀くんにキスシーンがある」「オタクが幕間で泣いたという『オタク無価値ソング』がある」くらいで、1つ目と2つ目は流れてきたゲネ写真を見てすぐにわかったが、オタク無価値ソングについてはさっぱり不明だったのでずっと気になっていた。

オタクは得てして被害妄想をしがちだ。だから、オタク無価値ソングも拡大解釈してるだけなんじゃないの?と疑ってしまっていたのだが、実物は想像をはるかに超えて尖った歌詞で、レポ主に謝罪したくなった。

「オタクに存在価値は無い」
「オタクはみじめ」
「明るい未来は無い」

と、歌唱力の高いキャストたちが高らかに歌っていた。明るい曲調で酷い歌詞が並べられているのでより辛くなる。新橋演舞場でこの歌を聞いているほとんどはオタクなのに、なんて仕打ちだろう。

ただ私の場合、想像をあまりにも大きく超えたのがおもしろくて、ニヤニヤしながら聞いていた。オタクでありながらオタク無価値ソングをまるで他人事かのように半笑いで聞いているのも最悪と言えば最悪だが、真の最悪ポイントはここではない。

ルーザーヴィルの本当にざっくりとしたあらすじは「マイケルとホリーの共同研究で世界初の電子コミュニケーションを成功させる」だが、その裏では「マイケル・ルーカス・ホリーの三角関係」が起こっていた。

マイケルとホリーがくっつくのは「瑞稀くんにキスシーンがある」時点でわかりきってはいたのだが、ルーカスが失恋することは知らなかった。

ホリーに振り向いてもらえずに悲しむルーカスのソロ曲もあったので、仮に私が本髙担だったら、当て馬役の自担に大喜びしながらルーザーヴィルに通っていただろう。

メンブレルーカスがいじめっ子につけこまれてマイケルとホリーを裏切ったあと、「マイケルは俺がいなかったら告白もできなかったのに」「初めにコンピューターをすすめたのは俺なのに」といった独り言を浮かべる。

そこでやっと、ルーカスが落ち込んでしまったのは単純に失恋したからではなく、親友をホリーに取られた嫉妬も含まれていたのだと気づいた。

また、ルーカスがホリーを好きになったのは、(中国人の女の子に英語を教える描写はあったが)オタク同士でつるんでいて女子と仲良くなる機会が少なかったから、ホリーが聡明で魅力的な女性だから、というのも勿論あるだろうけど、それ以上にルーカスは「マイケルが好意を寄せるホリー」を好きになったんだろうなと解釈した。

直後「この構図、『こゝろ』と同じだ!」と気づいてすごく嫌な気持ちになった。

なぜかというと、私は『こゝろ』も「先生・K・お嬢さんの三角関係」に見せかけて、実際はホモソーシャル的な側面が強い作品と捉えているからだ。

お嬢さんが主役のようでいて実は蚊帳の外で、先生とKの関係性を描く上での「道具」扱いをされているのと同じように、ホリーもその役割なのではないかと……。

ルーカスが追い詰められた時に、ホリーではなく真っ先にマイケルへの矢印が向くのも、その表れではないか。

また、マイケルがホリーと付き合うことになって喜ぶ場面で「ホリーが僕のものになるなんて」と歌うことからも、(マイケルにその自覚が一切無いとしても)ガールフレンドを所有物扱いする男性の心理が滲んでいるように見受けられる。

一旦、『ルーザーヴィル』も『こゝろ』も切り離して自分語りをするが、私は「百合に挟まる男は許せないのに女が絡むBLが大好き」という性質を持つ。

自分でも何でだろうと不思議に思っていたのだが、ようやく気づいた。

BLに登場する女性は男性同士のコミュニケーションツールでしかなく、あくまで付随的なもので、男性同士の関係性をより強固にする役割を担ってくれるからだ。

ルーザーヴィルに話を戻すと、ホリーは「男だったら宇宙飛行士も夢じゃない」と言われるほど成績優秀でありながら「女だから」という理由で奨学金を貰えず、周囲からは宇宙飛行士の夢をバカにされる。

いじめっ子のエディに脅された時は、のちに復讐するためとはいえ、一度は従順な女を演じる。

女であることを疎んでいた(そのために可愛らしい顔を隠す大きなメガネまでかけていた)ホリーは、野望を果たすために女であることを武器にする。この時点で結構しんどい構造なのに、私はその世界の外からもホリーが女であることを己の萌えに消費しているんだと自覚した途端、本当に最悪だなと自己嫌悪に陥った。

本当に……

私は最悪だし……

こんな世界も最悪だし……

ホリーに対する申し訳なさでいっぱいで……

だけど……

あぁ^~ルーカスが可愛すぎるんじゃぁ^~ 
マジでいい加減にしてほしいんだがwwwww
ねえいまどんな気持ち?♡♡♡
マイケルはホリーに夢中で寂しいよね♡♡♡
そうだよね♡♡♡
ずっと親友だったのにね♡♡♡
涙目になっちゃって可愛い♡♡♡
ヨシヨシ♡♡♡

という気持ちには抗えず……。

オタクって本当に最低!
   CANMAKE TOKYO

とはいえ、マイケルとホリーはコンピューターオタクだからこそ技術の発展に寄与できたし、ルーカスは後のジョージ・ルーカス(スターウォーズを手がける映画監督)という設定なので、SF小説をせっせと書くオタク活動も、名作を生み出すために必要な作業だ。

オタクにだって存在価値はある。

気持ち悪く思えたとしても(というかオタクなんてすべからくキモイが)無価値とは限らない。

その一方で、オタクは大なり小なりみんな業を背負っている。

マイケルはアーチ社のコンピュータールームに不法侵入して学校のコンピュータールームを出禁になるし、ルーカスはSF作家の夢に目がくらんで親友と好きな人を裏切った。

ホリーだって、マイケルのためとは言いながらも、研究欲・オタク的好奇心を満たすためにエディの脅しに応じた部分が全く無いとは言えないだろう。

私の場合、「関係性を重視するあまり個人の尊重に至らない」最悪ポイントがありますよという、そんな自己申告でした。そうですか。

おしまい。

おまけ

ルーカスを思い出してしまうので、しばらく本髙克樹の顔を直視できません。キモオタの心をぐちゃぐちゃにする素晴らしい演技をありがとう。ごめん、やっぱりかつきは可愛いね。

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この記事を書いた人

2022年秋に突然少年忍者にハマった新規オタクです。現場の感想や日記を書いています。

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