日記 – シークレットライフ感想

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シークレットライフ観た✌️

・ネタバレあり
・1回きりの観劇なので記憶違いや間違った解釈があるかも(特にセリフはニュアンス)
 →ご指摘・感想等waveboxにいただけたら幸いです……人の意見聞きたいので

主演のジェイミー役・本髙克樹くん(早稲田大学大学院博士課程)の専門分野でもあるOR(オペレーションズ・リサーチ)にかかわる話と聞いていたが、数学的知識がなくても楽しめる、哲学的な作品だった。

事前に得た情報①劇中でジェイミーがサラダを食べるシーンがあり、公演を重ねるごとにサラダの消費量が増えているレポがタイムラインに登場していた。どんなレポだ。

事前に得た情報②ジェイミーは母親を亡くして数週間でマッチングアプリで出会った女を実家に上げていると知り、変な主人公だなと思った。

物語は大学講師・エイヴァの講演から始まる。まだ客電はついて明るいまま、私たちは受講者という体で進む。

そこから「眠りに誘われるように」客席が暗くなる。ステージの後ろに四角い鏡が貼ってあり、最初は客席も映っていたが暗くなるとエイヴァの後ろ姿だけが映った。

「第四の壁」(舞台と客席を隔てる透明な壁)を破り登場人物が観客に語りかける演出は珍しくないが、鏡を通して観客(の像)を舞台上に存在させるのは珍しい。

劇場の後ろからジェイミーが現れ通路を歩き、テーブルについてサラダを食べようとする。意外と早く噂のシーンが来た。

……思ったよりサラダがデカイ。

日本のコンビニで売っているサイズのサラダを想像していたが、実際にはコストコサイズのプラスチックボウルにみっしりサラダが入っていた。シークレットライフの舞台はイギリスだからそれもそうか。

ジェイミーはフタをうまくあけられずに口を使ってあける。おい、こんなのレポで見てないぞ!心の準備をさせろ!

本当にこの量のサラダを、しかもドレッシングなしで食べきれるのか。ジェイミーがサラダを食べるかたわらでエイヴァが何やら語っていたがサラダに気を取られてしまった。申し訳ございません。見事食べきれて良かったです。口に葉っぱが詰め込まれてハムスターみたいだった。

ジェイミーがデカサラダを食べていたのは、マッチングアプリで初めて取り付けたデートで食べ過ぎを防止するためだった。

ふーん、俺はいっぱい食べる子って可愛いと思うけど?笑(やかましい)

レストランで落ち合うジェイミーとエイヴァ。

ジェイミー「僕のどこが良かったの?髪型?笑」

顔‼️顔‼️

顔顔顔顔‼️

Ahh~↑↑↑💥💥真夏🌞🌴🏄🎇🎆🌺のJamboree〜〜〜〜‼️‼️レゲエ🇯🇲💃🙌🏻砂浜🌺🌺🏖🏖🌴🌞Big Wave🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊💥💥💥

マッチングアプリで本髙克樹の顔面をお出しされてみろ。

俺ならロマンス詐欺を疑うね

レストランで会話を重ねる内にジェイミーとエイヴァはいい感じの雰囲気になり、数週間前に亡くなった母親の家(つまりジェイミーにとっての実家)に行くことに。

行き先がめっちゃ変だけどエロがりのゴール目がけてクラウチングスタートの構えをとるジェイミーがエッチすぎてどうでもよくなった😁←バカかい?

事後、そそくさと帰ろうとするエイヴァを引き止めるジェイミー。暗いのが怖いらしい。

なんだろうこの既視感……

あ!!!

Sho-Comi2022年9月5日号イチオシイケメングラビア「雷が怖くてヒロインを引き止める猪狩蒼弥(お世話係の作間龍斗と同居設定)」だ!!!

「せめて、雷がやむまでは────そばにいて」

きっとあの瞬間、シアタートラムでSho-Comiに思いを馳せたのは私だけだ。(そうだね)

ジェイミーが必死にお願いしたらエイヴァは家に留まることを決めてくれたが、イチャイチャするでもなく「あなたのおじい様の秘密の部屋が見たいわ」などと言い出す。

ジェイミーの祖父ブルーノは著名な統計学者兼歴史家で、エイヴァの専門分野ではレジェンド的存在。ジェイミーがブルーノの孫ということも、鍵がかけられさらには警報機までつけられた秘密の部屋があることも、エイヴァはレストランで聞いていた。

ジェイミー気づけ!!

ブルーノの孫として利用されているぞ!!!

ジェイミーの性交渉履歴について知る由もないが、少なくともマッチングアプリでの出会いはエイヴァが初めてとのことで、もしこれが初体験だとしたらあまりにも可哀想だ……。

エイヴァの暴挙は止まらず、コーヒーを淹れるよう頼みジェイミーが部屋から居なくなった隙に、封のされた箱を勝手に開けてブルーノの秘密に迫ろうとする。なぜ遺族の許可も取らずに故人のプライバシーを暴くんだ!落ち着け!

そんなことはつゆ知らず、コーヒーだけでなくトーストまで準備する健気なジェイミー。ここで毎回かつきのアドリブがあるらしい。

「可愛いだけじゃだめですか?🥺」

いいに決まってるジャン😍

もうっ♡♡♡

わかりきったこと聞かないでよねっ♡♡♡

私は昨年も一度だけ入った「東京流れ者」の日替わりで「萌え萌えきゅん」を引いており、フォロワーに「おねえちゃんは萌えを引き寄せる磁場がある」とか言われた。

自分が誇らしいですわ

ここからは真面目な感想を……。

要約すると、「ブルーノの秘密は国家機密のプロジェクトで爆撃の研究をしていたこと」だった。

正直そんな予感はしていた。第二次世界大戦を生きた男性が殺人に関与する可能性は非常に高く、その状況下では個人の善性はあまりに無力だからだ。

ブルーノの場合はその頭脳をもって「効率的な」爆発物を開発していた。効率的ということは、それだけ多くの人の命を奪うことになる。女子供、一般市民も。

ジェイミーは直接会ったことはないものの、祖父ブルーノを深く尊敬していた。だから初めはこの事実が受け入れ難い様子だった。

ただジェイミーには悪いが、戦時中に「良い家族」が極めて残虐な行為に及ぶことは珍しい話ではない。アウシュヴィッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスも、家庭では良き父親だったと彼の娘が語っている。

「ミルグラムの実験」でも、権威者の命令であれば倫理に悖る行為(他人に電流ショックを与える)を選択する人間が多数派だと恐ろしい証明がされた。

ブルーノもルドルフ・ヘスも、自ら進んで殺人鬼になったわけではないのだ。

ちなみに客席に置かれていた紙に記載されていて、舞台でも少し触れられていたが、ブルーノはポーランド生まれでイギリスに移住したユダヤ系だった。

ブルーノと共同研究していたジョージは、大学時代からの付き合いの同居人を爆撃で亡くしてひどく取り乱した。ジョージがブルーノを爆発物研究に引き入れたのに、先に心がやられてしまったのはジョージだった。いわゆるPTSDだろう、「毎晩あいつを殺した」と言っていた。

このジョージがまた良くてねえ……須賀貴匡さんめちゃくちゃかっこいいのに、同居人が亡くなってフラフラになった時は実際の身長より小さく見えて、汗と涙で顔を濡らして、本当に見ていて辛かった……。

国家に貢献するためという大義名分があろうと人を殺すことに代わりはなく、自分の大切な人が殺されてその痛みを実感する。残酷だ。

私が泣いたのは、ブルーノと妻・リタの、夫婦のやりとりだった。ボロボロと涙が止まらなかった。

ブルーノは亡くなったので、未亡人であるリタ(喪服を着ている)との会話はあくまでリタの想像上のものだ。

けれど、そこには愛が満ちていて、リタがブルーノを愛していること、生前のブルーノもまたリタを深く愛していたことがよくわかった。彼が手がけた爆発物で何人もの尊い命が奪われようと、リタにとって愛する夫だという事実が揺らぐことは無い。

先日親戚が亡くなり、「夫に先立たれた妻」が身近にいることも相まって、この2人にはそれはもう泣かされた……。個人的にはミュージカル「町田くんの世界」に並ぶくらい泣いた(要するにめちゃくちゃ泣いた)

リタ役の実咲凜音さん、とてもお美しくて、それでいて実年齢よりずっと上に見えてすごかった。(実咲さんは35歳だけも、リタはブルーノの葬儀時点で60歳くらい?なので)

ブルーノがジョージと違って研究に突き進めたのは、間違いなくリタの存在あってこそだろう。リタは聡明で強い女性で、ブルーノの死後40年近く長生きした。

リタが戦争で殺されたなら、ブルーノもまた「リタを毎晩殺す」目に遭っていたかもしれない。

ブルーノ、リタ、ジョージの過去時空の話はとても刺さったのだが、現代時空のジェイミー、エイヴァについては不明な点が多く謎が残った。

ジェイミーは暗闇が怖く、その際に母親についてチラッと言及したがそれ以上の説明はされなかった。エイヴァは暗闇が怖いのは人類の本能だと会話を展開させていたが、本当にそれだけなのだろうか。

母親が亡くなって数週間でマッチングアプリに手を出すのも母親が少し前まで住んでいた家に女を上げて子供部屋のシングルベッドで事に及ぶのもやっぱり変だ。

物語を進めるためにエイヴァをブルーノの部屋に入れる必要があったのかもしれないが、そもそもエイヴァが勝手にブルーノの部屋を漁るのがおかしい。

私は真面目に学問をやってこなかったので勝手に高尚なイメージを抱いているだけかもしれないが、研究の名の下に故人のプライバシーを侵害するのはいかがなものか。下衆な週刊誌とさして変わらないではないか。

ジェイミーはエイヴァがブルーノの秘密について出版しようとすることを非難するが、元を辿ればジェイミーがマッチングアプリで初めて会った女を安易に実家に上げていなかったらこんなことは起きていない。

(不真面目な感想失礼します)

性欲に負けた情けない男、可愛いな〜!😄

↑カス!!!!

(不真面目な感想失礼しました)

エイヴァがこんなことをしたのも大学をクビになって焦っていたからだけど、一体どこからどこまでが彼女の仕組んだことなのか。

ブルーノの孫に接近したところで自分の利益になる情報が得られる可能性が高いとは言えないし、一度帰ろうとした時にジェイミーが引き下がらなかったら折角家に上がったのに秘密の部屋を見られずじまいになるところだった。

初めから見せてと言ったら怪しいから、一度帰るフリをして要求を呑ませやすくしたのか?

そもそもなぜ大学をクビになった?

エイヴァは愛を教わらなかったと言っていたが、彼女自身の掘り下げはほぼ無かったのでよくわからない。人類は農業を始めてから定住を始めた、それは間違いだと非難していたことも合わせて考えると、家庭にあまり恵まれていなかった?

うーん……。

エイヴァのことがよくわからないままだから、失業で追い詰められて故人の部屋を荒らすやばい女っていう浅い見方しかできないんだよな。

ジェイミーも主人公ではあるけれど彼自身の目的はよくわからないし。

大抵の物語は欲望の達成に向けて進んでいくが(わかりやすく言うとラブストーリーだったら交際、スポ根だったら全国大会優勝など)、ジェイミーが舞台ではっきりと見せた欲望は食欲と性欲で、「祖父について知りたい」という欲もエイヴァに流された感がある。

まあ、ブルーノが爆発物の研究をしていた痕跡を焼却なりして完全に消すことを選ばなかったのは、自分の死後の名誉より学者として真実の保存を優先させたかったからかもしれないが……。

そういった意味では、(ジェイミーの怒りは当然だとしても)死後すべてが明るみに出るのはブルーノの想定内だった、と言えるのかもしれない。

ラストシーンで、人類の進歩を辿る場面があり、爆撃音が響く暗い戦争の間はブルーノがリタの目を手で隠し、美しい青空が広がってからはブルーノが手を外し、リタと共に空を見上げる。ここでまた号泣した。

ブルーノは、愛するリタには戦争、つまりは彼が加担した殺人を見せたくなかった。美しい景色を一緒に見ようとした。

私の好きな歌で「アクアテラリウム」という曲がある。その中でも特に好きな歌詞がこちら。

(略)いつかひとりで目覚めた君のはじめて瞳に映す景色が美しいものだけで満たされる様に(略)

やなぎなぎ「アクアテラリウム」- 作詞/やなぎなぎ

愛する人の視界を美しいもので満たしたいという祈りは、「あたたかくしていられますように」「きちんと眠れていますように」「おいしいごはんを食べられますように」という生命に直結するレベルでこそないが、幸せを願うという意味では引けを取らないし、全てまとめて「愛」だと思う。

それも、美しくないものをまざまざと見てきたブルーノだから余計に切実な祈りだ。自分が見た、生み出した地獄をリタには見せたくない。こんなにも妻を愛する人の、優れた頭脳の使い道が人殺しになってしまったことが本当に悲しい。

ブルーノのモデルになったジェイコブ・ブロノフスキーも、戦時中は日本の爆撃について研究していたが、戦後は経済発展に尽力したらしい。

どちらも「お国のため」だが、国の方針によって人を殺すための技術になるか人を生かすための技術になるか180°変わるのが恐ろしい。

この作品を日本で上演する意義のひとつに、日本が世界唯一の被爆国であることも挙げられるだろう。舞台でもヒロシマ・ナガサキの名前は出てきた。

私たちは同じ過ちを繰り返してはならない。しかし「歴史から学べるのは、人類は歴史から学ばないということ」だとエイヴァは言っていた。現に今だって、ガザで虐殺は起きている。

話は変わるが、私は昨年「デカローグ」という舞台に通っていた。「デカ」は数字の10、「ローグ」は言葉を表す単語で、デカローグは「十戒」という意味になる。ポーランドの映画が原作で、新国立劇場小劇場で3ヶ月かけて10本の舞台を上演していた。

私はこの作品を観劇してパンフレットも読んで、いつかポーランドに行きたいと思うようになった。それまで私のポーランドに対する印象と言えば「めちゃくちゃ暗い」だった(現代文の教科書に載っていた『カプリンスキー氏』で遠藤周作がそう言っていた)が、演劇を始めとする芸術が豊かなことや、新しいものを受け入れる文化への柔軟さがあることも知った。

一方で、ポーランドに暗い影を落とした悲しい歴史はなくなりはしない。

シークレットライフを経て、ポーランドに行きたい気持ちは強まった。デカローグの舞台になった土地というだけでなく、(舞台はずっとイギリスでの出来事だったが)ブルーノの出生地でもあるから。

何より、アウシュヴィッツ収容所に行ってみないことには、多くの物語で語られるあの悲劇が現実に起きたものとは思えない。あまりに凄惨で信じたくないのもあるが、遠い異国の地の出来事なのもあって、肌で感じることが出来ないと言うか……。

平穏な日々を過ごしてきたので「実感」はできない(それはとても幸運なことでもある)が、広島の原爆ドームや沖縄のひめゆりの塔に行く前と後で戦争ものに対する肌感覚が少し変わったように、仮にシークレットライフ前にアウシュヴィッツ収容所に行った経験があったなら、ブルーノとジョージの苦しみの受け止め方はもっと違ったものになっていただろう。

シークレットライフを手放しに絶賛することはできなかったけれど、良い作品だったと思う。少なくとも私にとって観劇して良かった作品であることは間違いない。

一度で理解することがとても難しい作品ではあるので、取りこぼした部分も多いだろうけれど、複数回見たところで完全に理解することはできない……というか、「間違っているかもしれない」という意識の大切さをブルーノは説いていたので、うんうん頭を悩ませるくらいが丁度いい気がする。

私は1回入っただけでもかなり体力を持ってかれたので、この作品に通っている皆さんを尊敬します。公演時間は2時間ないくらいでコンパクトだけどエネルギーの消費量は半端ないでしょう。お疲れ様です。

日頃は目の前のことでいっぱいいっぱいで、迫り来る問題に答えを出すだけで一日が終わるけれど、人生に必要なのは自ら問いを立てることだと思っているので、舞台を通して問いが生まれてそれについて思考できてとても嬉しい。

え?

前半ジェイミー萌え豚発言を繰り返してたくせに偉そうに……(全部台無し!)

蛇足

私はルーカス・桜木・カズトがだあいすき♡なので、ジェイミーも情けない顔を拝めたのは良かったですが、彼らと違って「努力」や「才能」にまつわる苦悩・嫉妬は見られなかったので、かつき萌え役三銃士が四天王になることはありませんでした。

かつきがもう少し年齢を重ねて、ジョージ役をやってくれたら狂喜乱舞します。

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この記事を書いた人

2022年秋に突然少年忍者にハマった新規オタクです。現場の感想や日記を書いています。

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